第12章 稲垣社長これは施し、それとも取引?

家に帰った高橋遥は、保温ボトルをテーブルに置いた。

中村おばさんは、ずぶ濡れの高橋遥を見て、急いでタオルを差し出した。「あなた、タクシーに乗らなかったの?」

高橋遥はタオルを受け取り、笑顔で答えた。「今日は雨が降っていて、タクシーを捕まえるのが難しかったんです」

中村おばさんは心配そうに聞いた。「それで、誰が送ってくれたの?まさか…」

高橋遥は彼女の言外の意味を察し、説明した。「裕樹さんです。途中で彼に会って、送ってもらいました」

中村おばさんは頷いた。「そうだったのね」

「そういえば、今日稲垣奥さんがあなたを訪ねてきたって聞いたけど、何を話したの?」

高橋遥は生姜茶を一口飲ん...

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